かゆみの改善は漢方の得意分野の一つ
秋口から冬にかけて、皮膚のかゆみを訴える人が増えます。強いかゆみのために眠れなくなる人もいるほどです。
強いかゆみはあるが、発疹などの異常は見られない、特に冬場にかゆみがひどくなるそうした症状のことを、皮膚掻痒症といいます。
体質や年齢(50代以上)によって、皮脂の分泌量が少ない人に発症しがちで、かゆみが出る場所は下半身だったり全身だったりするなど、人によってさまざまです。かゆいところをかくと、乾燥した皮膚の表面がはがれて、ウロコのようにポロポロ落ちることもあります。
皮膚科では、かゆみ止めの薬の抗ヒスタミン剤とともに、皮膚の乾燥を防ぐ保湿剤を出すことがほとんどです。
漢方では、かゆみを二つに分けて考えています。一つは血熱(けつねつ)といって皮膚が赤く腫れて熱を帯び、かゆくなるものです。虫刺されやニキビなどが、これに該当します。
もう一つは血虚(けつきょ)といって、血行不全のために皮膚が乾燥し、かゆみが生じるもの。皮膚掻痒症は、漢方では「枯燥(こそう)」と呼ばれ、こちらに当てはまります。
加齢や気温の低下とともに血行が悪くなり、皮膚を潤す皮脂の分泌や水分の含有量が減ったところへ、湿度の低下が追い討ちをかける。すると、乾燥がますます進んで皮膚がカサカサになります。
乾燥した皮膚は外部からの刺激に弱くなり、感覚的にも過敏になることから、かゆみが生じるのです。
漢方では、血行の悪さというかゆみの根本的な原因に注目し、それを取り除くことによって症状の改善を図ります。血の巡りをよくして皮膚に潤いを取り戻し、かゆみが消えるようにしていくのです。
昔から、かゆみに悩む人は多かったようで、漢方には血虚のための薬がたくさんあります。実は、かゆみの改善は、漢方の得意分野の一つなのです。
そうした数あるかゆみを取る漢方薬の中で、最も皮膚掻痒症に効くといわれているのが、当帰飲子(とうきいんし)です。
当帰飲子は、薬剤名の一部になっている当帰を筆頭に、芍薬(しゃくやく)、川弓(せんきゅう)など10種類の生薬(漢方薬の原材料となる動植物、鉱物などの天然物)を組み合わせた漢方薬で、血流を改善する働きに優れています。
私の経験からいっても、これが一番のお勧めです。ただし、漢方薬は体質や症状に合っていないと、本来の薬効を発揮することができません。
ですから、誰にでも当帰飲子がいいというわけではなく、体力がある人には黄連解毒湯(おうれんげどくとう)を、体力がない人には真武湯(しんぶとう)や牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などを勧めることもあります。
同じ当帰飲子を処方するにしても、人によって生薬の配合や量を変えることもあります。漢方では、いわゆる「見立て」と「さじ加減」が治療の成否を大きく左右しますので、ぜひ専門家にご相談ください。
かゆみ知らずの快適な冬を過ごす
では、皮膚掻痒症がよくなった患者さんの例を紹介します。3人とも、10月から11月にかけて、私たちのクリニックに治療に来ています。
Fさん(女性)は68歳。昼間は平気なのですが、夜、床に入ると、体のあちこちがかゆくなって眠れません。血がにじむまで皮膚をかいてしまうこともあります。皮膚科に通って、かゆみ止めの注射と飲み薬で治療していたのですが、胃腸が弱く、飲み薬を受け付けなくなって、漢方治療を試みました。 |